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野井:スライドがずっと続いてますけど、3人で語り合うというのはどうですか。 河上:そういうのは橋本さんも僕もたぶん一番苦手なんですが…。映画の話しにしますか? 野井:それするとおそらく今日は帰れないかもしれん。 (会場笑) 僕は映画が好きで、楽しみの大きな要素のひとつなんです。映画を見てるとその世界に自分が入り込んでいけるんで、時間とか忘れてしまうんですね。仕事にもすごく参考になってます。気軽で時間を有効に使える方法かな、と思いますね。 ちっちゃい時に観た「第三の男」(*33)っていうかなり古い映画があります。白黒なんですけど、光ってるところと影のところがとても明快に表現されてて、そうした演出とストーリーがピタッと合ってるんですね。見た時はまだ少年やったからテクニックの難しさまでは読み取れなかったんですけど、いま考えると素晴らしいなと思います。 カラーでびっくりしたのが僕が最初に観たディズニー映画の「バンビ」(*34)ですね。その後「白雪姫」(*35)とか「ピノキオ」(*36)も観たんですけど、あのやわらかいタッチがすごく好きでした。あとは色の使い方、配色の素晴らしさですね。日本人とは違った豊かな感性やな、という気がしました。日本人は中間色が上手いですね。ちょっと白を加えたりグレーを加えたり。それは日本の気象の変化も影響してるかなと感じます。 河上:聞くところによると映画をお作りになりたいとか。 野井:お金が無いんで願望なんですけれども。ヨーロッパの短編映画のコンペに出品したりして、ちょっとでも目に留まったら嬉しいなと思うくらいですね。 河上:橋本さんも映画をかなり見てはりますよね。 橋本:僕もなぜか小学校、中学校から映画が大好きで、はじめはアメリカ映画から、「栄光のル・マン」(*37)とかを観て影響を受けています。野井さんと一緒で、ものを考えるときは映画がよく思い浮かぶんですね。だけどストーリーは忘れちゃうんですよ。ワンシーン、ワンシーンを思い出します。 高校の時かな、彼女と最初のデートで、なんも内容知らんと「ソドムの市」(*38)を見に行ったんですよ。もうドン引きされて帰った記憶があります。マルキ・ド・サド(*39)が原作で、今やまともに見れない映画ですね。 さっきの色の話しですと、昔は色見本もなんも無いから広告の紙とか布地を切ったりして、こんな色、って現場で説明してたんですね。ハレの場の色のイメージが分かれへん、となったら四天王寺の行事を見に行って、こんなん使うんや、とか言いながら参考にしていました。僕はけっこう色を使う方なんですが、そんな風に多方面の記憶ちょっとずつストックされて、それが滲み出していくような感じでやってるんかなあ、と思います。 昔はテレビでも映画をたくさんやっていました。「世にも怪奇な物語」(*40)三部作を深夜に観たりとか、シュールな作品が好きでしたね。80年代に入るとフランス映画にもどっぷりはまりました。道具屋筋に映画館があって、そういう映画をたくさん観させていただきました。 野井:「千日前セントラル」(*41)ですね。昔そこで映画を観た時に、まわりを見たら他に一人くらいしか座ってはれへんかったんです。なんかぞーっとしてね。画面も暗かったし。最終の上映時間やったんですよ。劇場を出たら、あそこ道具屋街ですから、みなシャッター閉めてるでしょ。恐いんですよ。はよ難波の駅まで行かんとあかんなあという、そんな雰囲気でしたね。 橋本:近いところでは「国名小劇」(*42)もありましたね。ほんとにいい映画をやっていました。ヘレム・ボナム=カーターが主役で、音楽がルイス・バカロフの「ラ・マスケラ」(*43)って言うイタリア映画があって、封切り当時は評価が低かったんですが、とても綺麗な作品でした。「国名小劇」ではそれが一番印象に残っています。映画館ってたくさんあったんですよね。 野井:キタやと「大毎地下劇場」(*44)とかね。あと、中崎町のビルの階段を2階に上がったところに個人経営の映画館があるんですよ(*45)。 橋本:パイプ椅子でやってるところですよね。 野井:ああいうのが残ってるのは嬉しいですね。 橋本:昔は堂山の辺にあったんです。その頃はパイプ椅子が10脚くらいでした。 野井:弁士ってご存知ですか。この間、無声映画を観ましてね、弁士が女性の方やったんですよ。上手いこと喋らはるんです。語るっていう感じですかね。ああいう映画も楽しいし、雰囲気ありますね。ちょっと前に「アーティスト」(*46)っていうフランス映画があって、新作なんですけど白黒の無声映画なんですね。なかなかお洒落でした。アカデミー賞を取りましたね。こういう感じで映画を語る会もやってみたいですね。 河上:何年か前にここのカフェ(*47)で映画を見る会があったんです。野井さんや橋本さんに映画を選んでもらったりして、月イチでやっていたんですが、またやりたいですね。 野井:ああいうの続けて下さい。 |
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